あげお在宅医療クリニック 内科、消化器内科、外科

 

胃ろう

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胃瘻とは

胃瘻とは、胃の内と体外を結ぶトンネル(瘻孔)の事をいいます。
多くの場合、栄養管理を目的に手術的に造られます。悪性腫瘍などによる幽門部・上部小腸閉塞やイレウス例における減圧目的に造設される事もあります。
厳密には「胃瘻」とは腹壁と胃壁に囲まれた瘻孔そのものを意味しますが、瘻孔に挿入されたカテーテルを含めて胃瘻(広義の胃瘻)と呼ぶ場合もあります。 用語としては、瘻孔そのものを「胃瘻」、瘻孔に挿入されたカテーテルを「胃瘻カテーテル」と表現します。
よくつかわれる「ペグ」という言葉は、
Percutaneous Endoscopic Gastrostomy(経皮内視鏡的胃瘻造設術) の頭文字をとって"PEG ペグ"といわれるようになりました。従って、ペグとは、胃瘻そのものもしくは経皮内視鏡的胃瘻造設術の手術をさす言葉です。


 

胃瘻の歴史

1822年に猟銃が暴発し、左腰に銃弾があたった28歳の患者で、受傷10ケ月後には傷はほとんど治癒したにもかかわらず皮膚と胃の間にだけはトンネル(胃瘻)ができた症例をアメリカの軍医William Beaumont (1785-1853)が報告をしました。 これが初めての胃瘻の報告とされています。
人為的につくられた胃瘻の初めての報告は、手術で造設する方法について記したノルウエーの軍医のChristian August Egeberg (1809-74)とされています。
そして、「ペグ」と呼ばれる経皮内視鏡的胃瘻造設術が初めて報告されたのは、1980年にGaudererとPonskyによります。


 

胃瘻の種類と長所短所

カテーテルには4つのタイプがあり、それぞれ長所短所があります。
こちらのサイトに詳しい情報があります。


 

良い胃瘻と良くない胃瘻

良い胃瘻と良くない胃瘻とは、胃瘻の作り方や管理の仕方の話ではありません。患者さんにとってハッピーな胃瘻かアンハッピーな胃瘻かの話です。 介護保険が施行された西暦2000年頃より、胃瘻造設の件数がとても増えました。高齢者で、食事ができなくなるとすぐに胃瘻と言われた時代がありましたが、 介護保険も施行後20年以上経過し、胃瘻造設の適応に検討が加えられました。
認知症が高度な高齢者や意識もなく寝たきりの高齢者にとって、胃瘻は本当に幸せな事なのだろうか?本人は胃瘻で延命していくことを望んでいるんだろうか? こんな議論が盛んに行われたことは、まだ記憶されている方も多いと思います。この時は議論の中で、「胃瘻という技術」と「胃瘻造設を適応する考え方」を混同して議論されたため、 現在でも、「胃瘻はよくないものだ、胃瘻はやりたくない」とおっしゃる方が少なくありません。しかし、胃瘻が良いとか悪いとかではないのです。胃瘻という医療技術は極めて優れた方法です。
携わる医療者、ご家族に考えていただきたい事は、胃瘻造設を考える以前の段階、経鼻胃管を含めた強制栄養を実施する前に、患者さん本人にとってそしてご家族にとって幸せが何であるのかです。 本人も家族も幸せな胃瘻はいい胃瘻です。言いかえればみんながハッピーな胃瘻、これがいい胃瘻です。 しかし、もう少し先の事も考えておかなくてはなりません。みんなにとってハッピーな胃瘻でも、患者さんは月日とともに年をとります。いずれは生き物としての衰えを迎えます。 その時には、ハッピーだった胃瘻がアンハッピーな胃瘻になってしまう事もあるという事を。

主治医から胃瘻を提案されたときに一読をお勧めする本があります。
「胃ろうという選択、しない選択 「平穏死」から考える胃ろうの功と罪」長尾 和宏 (著)  セブン&アイ出版


 

当院の目指す胃瘻

当院は入院病床を持たないクリニックです。胃瘻造設には入院管理が必要なため、胃瘻造設が適切な場合には連携医療機関への入院をお願いしています。
胃瘻造設した後の管理、維持は当院でお引き受け可能です。
胃瘻管理の中で、胃瘻カテーテルの交換は患者さんにとって大きなイベントです。これまでは、胃瘻カテーテル交換は設備の整った病院で実施することがほとんどでしたので、 患者さんに通院をお願いしていました。しかし、胃瘻を必要とされる方の多くはご自身で歩く事の容易でない方々です。ご家族が休みをとって送り迎えをしたり、介護タクシーを頼んだり、人手も時間も大変な負担があったと思います。こういった在宅療養をされている患者さんに大変な思いをさせて維持する胃瘻はいい胃瘻ではありません。
そこで、当院では胃瘻カテーテル交換を在宅のまま行っています。胃瘻から入れる事のできる細い内視鏡を持参で医師・看護師がお宅まで伺います。 在宅のまま胃瘻カテーテルを交換ならば、ご本人・ご家族の大変な思いはかなり軽減できるのではないでしょうか。そして、胃瘻管理のエキスパートが安全に胃瘻カテーテル交換を行います。
当院で胃瘻カテーテル交換を行っている患者さんの胃瘻トラブルは、24時間対応しています。
在宅での交換をより安全に行うために、バルーン型のカテーテルを使用する事をご提案しています。詳細はクリニックまでご相談ください。

当院の院長はPEG・在宅医療学会に所属し、「専門胃瘻造設者」「専門胃瘻管理者」という県内でも数名しか所持しない認定を持った胃瘻のエキスパートです。